Lens Impression
Hugo Meyar社の非常に珍しい初期のプロジェクター用レンズ、Kinon Superior 50mmf1.6です。
このレンズにはf1.5もあるらしいのですが、まだめぐり合っておりません。
プロジェクター用ですから、本来は絞りもヘリコイドも付属しておりませんでしたが、MS-OPTICALの宮崎さんにお頼みしたところ、見事に双方とも装着いただき、とても美しいライカレンズに生まれ変わりました。上記レンズ画像を見るとオリジナルのライカ用と言っても良いくらいの違和感ない仕上がりになっています。
改造時の球面収差テストによると、予想外の過剰補正型で、開放時にはオーバーコレクションによるフレアが顕著で、f2では逆にマイナス側のフレアに変化するという複雑な補正結果になっています。但し、実写の印象では、むしろそれたら球面収差によるフレアはいずれも好ましい程度で、開放時にはむしろ周辺に残存するコマ収差・非点収差のほうが支配的です。非点収差は後ろボケがぐるぐる、前ボケが放射というパターンですが、これらも個人的にはとても好みですので、全く問題ありません.
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フーゴ・マイヤー社のプロジェクションレンズがキノンであるが、詳細な資料が残っておらず、出荷台帳にも記載がないので、特定が難しいレンズである。Vade
Mecumによると1919年ごろにキノンからキノン・スーペリアとなり、f1.5とf1.6が製造され始めたとあるが、f1.5の実物にはいまだめぐり合っていない。手元のレンズはf1.6の真鍮ブラックペイントの物で、後にクローム仕上げのものが多くなることから、1920年代半ばころの初期型かと思われる。
レンズ構成の公式な記録もないが、整備の際に分解した結果3群4枚のペッツバール型と判明している。50mmしかもf1.6という明るいペッツバール型レンズで35mmフルサイズをカバーするものは珍しい。周辺部の像面はかなりの湾曲と非点収差を見せており、面白い描写を楽しめそうなレンズである。
1938年のBritish Journal of Photographic ArmanacのA.O.Roth社の広告にキノン・スーペリアの記載があったが、すでにクローム仕上げとなっており、鏡胴の形態も手元のもとよりはだいぶ後期のようだ。
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